夏祭りの醍醐味


8月、花火の季節


「結麻」


「あ、早かったね若くん」


私の名前を呼んだのは、紺の浴衣で足早に人混みから抜けてきた彼


「部活、お疲れ様です」


「あぁ。主に先輩達を撒いてくるのに労力を使ったがな」


「一緒に来て頂いても良かったのに」


私がそういうと、若くんは至極嫌そうな顔をした


「結麻はあの人達を知らなすぎるから、会わせるのは危険すぎる」


「先輩方に対して、あの人なんて言わないで下さいな」


「はぁ……」


私になにか言うことを諦めたのか、ため息だけついて私の手を取ってくれた


「なににする」


「え…っと、かき氷」


道路脇に沢山並んだ出店の中から目のついた名前を口にすれば、私を引っ張って人混みのなかを余裕で抜けていく日吉くん


すごいな、なんて感心していれば、ほら、と目の前にきれいな青色のかき氷を差し出された


「一緒に食べよ」


「…あぁ」


笑いながらありがとう、と言ってストローだけでさくさくかき氷をとかしていると、日吉くんは少し脇道にそれてそこで腰を下ろした


「結麻はこんな少なくても一人じゃ駄目なのか」


「うん。きっとこんなに食べられないかな」


私は一度に食べられる量が普通の人よりも少なくて、それを知っているから日吉くんはひとつしか買ってこなかった


というより、二人で食事するときはいつもそうだ


「冷たっ…」


普段通りに口に運んで、冷たさに思わずそう口走ると日吉くんはふっと口許を緩めた。


「…笑わないの」


「今のは結麻の無用心さが悪いな」


「分かってますもん」


はい、どーぞ


私の手から彼が食べることなんていつものことなのに、今日はいつもと違う雰囲気だからか少しドキッとする


「冷たいより、甘い」


精悍な横顔と、さらさらの髪がとてもきれい


男の子にしては細く見えるのに肩幅はあって、かっこいい


こんなに素敵な人が私を選んでくれたということが今でも時々信じられなくなる


かき氷を食べて二人で歩きながらお店を見ていると、急に繋いでいる手を引っ張られた


「どうしたの?って、わぁっ」


私と同じ下駄なのに日吉くんは慣れたように走っていて、当然慣れていないわたしは躊躇いながら拙く後ろで引かれるがままに追いかけた


「わ、若く、ンっ」


「…、少し待て」


……えー、ひよしだ………


……ぜってぇいたって…


………まちがいじゃねーのか…


声が近づいて、そして遠ざかってやっと私の口を塞いでいた大きな手も引っ込められた


「…すまなかったな、急に」


「…大丈夫。あの方たちが部活の仲間?」


「あぁ」


かちり


お互いの視線が合い、かああと顔に熱が集まるのが自分でも分かった


「わ、若くん近い…」


恥ずかしい…


暗い中、こんな至近距離で密着すればお互いの熱が感じられる


そして、日吉くんの顔がゆっくり近づいたかと思うと


「…んっ」


唇に柔らかい感触


下唇を食まれ、歯列をなぞられる


「ん……んん…ん……」


巧みな舌使いにただ翻弄され、口内を犯される感触は私の下肢をじゅんと潤わせるには充分だった


脳の髄が痺れて、体にうまく力が入らなくなる


「……ん、ふ……」


じゅる、ちゅぱ、と卑猥な音が煽り、日吉くんのその手もゆるりゆるりと私の体の線を伝って体は疼き出す


その手が下腹部、腰、太腿に降りて前にすっとずらされて私はやっと状況を理解した


「ンっ、」


衣の上から股に手を這わされ、私は日吉くんの肩口を押す


でもその強靭な体躯は私なんかで揺るぐはずもなくて口を塞がれた私はなすすべもなく草影に押し倒された


「若くんだめ…っ」


後ろの結び目をほどかれて緩くなる帯に、さぁ、と自分の顔が青褪めるのがわかった


でも、夜空を背景にする日吉くんはにやりと微笑を浮かべて私を見下ろした


「煽ったのはお前だ」


責任を取ってもらう


もうこうなってしまっては、私が何かして状況が変わることなんてありえない。


すっと衣擦れの音がして帯が抜かれ、懐に差し込まれた若くんの片手が肩まで上ってくる。


その手が肩のラインをなぞるように滑り、ゆっくりと肌蹴れる浴衣の隙間から除覗き出すのは自分の健康的とは言えない白い肌。


「……ふっ、抵抗しない大人しい結麻というのも、いいもんだ」


「そんなこ…、ァっ、はンッ」


突然に摘ままれた乳首からの刺激に自分でも驚くほど淫らな声が飛び出して、それと同時にはっとした。


「やァっ、こんな、ンンっ、…誰か来ちゃ、アんッ、ッア」


嫌々するように若くんの大きな手の上から自分のを重ね、乱された襟を何とかして押さえる。


こんな、誰が何時くるかもわからないような不用心なところでなんてできない。


例え若くんがいるとしても、こんな公共の場所で浴衣を脱ぐなんて絶対に無理だ。


「いや、やだ若くん…ッ、」


私のできる、精一杯の抵抗。


なのに若くんはそんな私を笑みさえ浮かべて見下ろしてきていて。





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