第五章

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「いやだっ!!」

 はっとして飛び起きた流李。
すると、視界にはまざまざとした現実が映る。

「帰りたい……」

 紅の魅せる悪夢のせいか、目覚めた流李の身体は汗ばんでいた。

 自分の身体を抱き、流李は紅いベッドの上で小さく踞まった。

 目を開けるのが嫌になるのは、赤と青の異様な部屋のせいだろうか。

それとも、拒絶したい現実のせいだろうか?


「帰りたい、嫌だよ……こんなの」

 現実を瞳に映したくない、でも目を伏せれば見えてくる。

 紅に犯される自分。
そして犯されてるにもかかわらず、喘ぎ、快感に顔を歪める自分の姿。

 認めたくない自分の姿、みたくない自分の姿。

 目を開けても、伏せても、閉ざしても、何からも逃げられない。

「自己嫌悪なんてしたら、彼らの思う壺よ?」

 ベッドに沈む流李に呑気な声が届いた。

 その声はあの二人のような低い声ではなく、高く、透き通るような美声。

「彼らは君みたいに自己嫌悪する子が好きだから。もっと考え方を変えるの」

 淡々とした口調で話す彼女に流李はそのままの体制を崩さずに目をやる。

「あいつら以外にも人がいたんだ」

 綺麗に巻かれた髪を肩から胸に垂らし、流李のドレスのような服とまったく同じ作りで色違いの服を着る女の子が、正面の青いベッドに腰かけていた。

「わたしは蒼穹様の駒で君は紅様の駒」

 ほころびながら言う彼女に、流李は疑問符を浮かべて首を傾げる。

「え……?」

 聞き返すと彼女はぽかんとした表情を浮かべ、やがて無表情になった。

「彼らが監禁ゲームと呼ぶわたしたちが強制参加させられているこのゲームの歴史は古いの」

 彼ら、とは紅と蒼穹のことだろうか。

いや、話の内容からしてそう解釈するしかない。


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