お嬢様、お客様でございます

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パシャ・・・チャプッ・・・

空、いや、場所すらも定かではない「異世界」

その一角にある東洋風の建物から聞こえる湯浴みの音。

湯船から立ち上がる一人の女性。

その肌は、照らす月明かりさえもはね返そうかという程に白い。

濡れた漆黒の髪が肩に、背中に、墨絵のような曲線を描いている。

【おはようございます、お嬢様。お湯加減は如何でしたか?】

右手を前に回し、恭しく礼をする小男。

「おはよう、毘々。 良いお湯加減でしたわ」

凛とした透き通る声が響き、着物を身に纏った美女がテラスに歩み出た。

『かぐや』・・・竹取物語に出てくる謎の女性。

月の住人とも言われているが、確かなところは誰も知らない。

過去に犯した罪を償うため、地上に降りては魂の救済を行い・・・

いつ終わるとも知れぬ償いの日々。

愁いを帯びた瞳が月を映す。

「今日もまた美しい・・・穢れの無い月明かりを、この星の不幸が曇らせているのでしょうか・・・・」

【悩める者共の魂の涙ですな・・・】

毘々が言葉を繋いだその時。

「うんッ!?」

【大丈夫ですかお嬢様っ!如何なされました】

倒れこむかぐやに駆け寄る毘々。

「苦しんでいる・・・魂の、叫びが!」

彼女の頭に響く、人間の悲しい心が呼んでいた。


「参りましょう、私達の故郷がこれ以上遠ざからないように」

そう言うと、かぐやは舞い上がった。天の羽衣をはためかせて・・・地上へと。


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