今更貴方
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「別れよ。」
この一言で私達は他人になった。
あれから数ヶ月。
私には新しい彼氏が出来た。
「由美〜!!」
ぶんぶんと元気よくグラウンドから私の居る二階の教室へ手を振る私の新しい彼氏、藤堂平助。
私は平助に手を振りかえすと嬉しそうに笑う。
そんな彼は、元彼とは全然違うタイプだった。
くそ真面目だし、真っ直ぐだしちょっとガキっぽい。
それに私に一途だ。
私は誰もいない放課後、こうして教室で彼がサッカーをしているのをいつも眺めていた。
カーテンがさらさらと揺れる。真っ白なカーテンがオレンジ色に染まり、私に夕方を告げる。
「そろそろ終わるかなぁ」
あともう少しで終わらないかとグラウンドを見るが全然そのような気配はない。
私がふぅとため息をついたとき。
「あれ、」
唐突に聞こえた私にとって懐かしい声。
「由美ちゃん、まだいたんだ」
ちょっと弾むような、茶化しているような、この声。
「何、」
私は心の底から絞り出すように冷たく低い声をだした。
「あはは、そんな怖い顔しないでよ。」
「……。」
早く、早く早く早く早く出ていってよ…!!!!
私のそんな願いも叶うはずなく。私達は誰もいないココに二人きり。
すごく居心地が悪い。
「そういえば由美ちゃん、今、平助と付き合ってるんだよね??」
この男から出た話題はさらに場の雰囲気を悪くするだけ。
「そうだけど。なに。」
「楽しい??」
私は本当にこの男が嫌いなようだ。
私の中からふつふつと何かが沸き上がる。
「ええ、楽しいです。貴方なんかといたよりもずぅっと、ね。」
嫌味を言う私にこの男は不適な笑みを浮かべる。
そして、私に近づいてきた。
「ふぅん」
じりじりとせまるこの男から私は逃げる様に後ずさる、が、ドンっと先程平助に手を振っていた窓にぶつかってしまった。
「っ!!!!」
男の顔が私の近くまで迫り私は逃げようとするが男は手を窓にばんっとつき、私は逃げ場をなくした。
「ちょっ、止めて!!!」
男は何もいわずに私に迫り、目を閉じた。
「いやぁ、…んんんっ!!!!!!」
唇が荒々しく重ねられ、私の酸素を奪っていく。
その内、私の唇を割って入ってくるこの男の舌。
私の舌を捕まえれば絡められて私は気が遠くなる。
この男はいつもこんなキスをする。