修学旅行でしこり合い
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学年が始ってすぐに旅行のメンバー決めが始った。
俺たちの担任はかなり放任主義で、ホームルーム開始時の一言目は「男子は男子で、女子は女子で決めとけよ。」。
幸い俺には中学のころから仲のいいヤツも何人かいたし、余るようなことはなかった。
さっそく宿泊先の部屋割りを決めることになった。決めるといっても基本は一緒の部屋。
ただ2日目だけは1部屋3人。ただクラスの人数の都合で、どこか2人の部屋ができてしまう。
黒板に書かれた部屋番号とマスの下に自分たちの名前を書くようだったのか、
もう3人の部屋は他のクラスメイトの名前で埋まっていた。俺たちは旅行先の話で盛り上がっていて気がつかなかった。
「マジ?俺らの中で2人になるの決めるわけ?」
教室に声を響かせたのはマサ。マサは小学校3年ぐらいからの長い付き合いで、
中学ごろ、俺が「ゲイ」であることを知るより前から気になっている存在だった。
「ならさー、もうジャンケンで決めようぜ」
単純に同じものを出したヤツが2人そろった時、その2人が2人部屋になる。
こうして俺とマサは同じ部屋になってしまった。俺は内心うれしかった。
その日の夜、俺は修学旅行のことばかり考えていた。何を持っていこうか、どんなコースにしようか。
そうして俺は2日目の夜に行き着いた。若干、不安だったからだ。
うれしかったのは間違いないが、俺はゲイだ。
もちろん俺は自分がゲイであることはカミングアウトしていない。
オマケに俺はマサに惹かれているところがある。
「もし、ゲイだってバレたらどうしよう。」
たった1日しかも1晩ではあるが、俺とマサは1つ屋根の下で夜を共にするわけだ。
俺がぎこちなかったら不振に思うこともあるだろうし。
嫌になった俺はシャワーを浴びてすぐ寝てしまった。
そして時間はあっという間に過ぎて修学旅行当日。
そのときにはそんな不安なんて、忘れてしまっていた。
俺たちは1日目をめいいっぱい満喫した。
楽しくて楽しくて仕方がなかった。
けど、その時が近づくにつれ、あの不安が蘇ってきた。
2日目の夜。ホテル6階にある●●高校会場で晩飯を済ました後、
俺は仲間と一緒にたわいない会話をしたり、トランプをしたり盛り上がった。
その時コンコン、とノックの音。風呂の順番が回ってきたようだ。
このホテルの屋上にある浴場。露天風呂もある。公共の場であるから、
一般のお客さんに迷惑がかからないよう、グループごとに入浴時間があるのだ。