甘美なる性生活

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くちゅ、くちゅ……。

「ぁ…っ、んぅぅ、ぁあんっ」

真っ暗闇に響く、喘ぎ声。部屋の大半を占める巨大な高級ベッド。その上でシーツを波立たせ、裕太は一人快感に悶えていた。

「ふぁっ、ぁ…健次……ッッ」

愛しい彼の姿を胸中に刻む度に、陰茎から透明な蜜が零れ出て。ソレを指先で掬い亀頭に擦り付ければ、自身はより高みへと募らされる。

先刻からの淫行により、最早イく事など容易いハズなのに。それでも達せられない。

“何か”が足りない。

小さく艶やかな吐息を洩らし、先走りで濡れた指を後孔に導いた。

「ひゃぁ、んぅ……っ、ぁ…っ」

ぬぷっ。ペニスからの淫液と腸液によって滑りを帯びる蕾。数本の指は抵抗も無く簡単に挿入された。

ぐにぐにと胎内を解すように指で蹂躙する。

「や、ぁぁ……も、イッちゃ…ひにゃぁんっ!!」

指先が腹部上方に位置するシコリを捕らえる。その瞬間。全身を痺れるような快感が駆け抜けて。焦らされ高められたペニスは一気に欲望を吐き出した。

「ぁぁ……っ、はぁ……ん」

乱れる呼吸。シーツに染み込む精液。廻りを漂う淫靡な臭い。全ての要素がこの空間を、何処か禁忌的なモノにしていた。

「……健次」

ぽつりと洩れた、愛しい人の名。重たい瞼を閉じて彼の姿を想い描いた。

本来なら甘い夜を共にするハズなのに。度重なる出張や残業により、なかなか叶わずにいた。

「………逢いたいよ」

逢いたいのに、逢えない。声が聴きたいのに、聴けない。温もりを感じたいのに、感じられない。

極度の寂しさと言い知れぬ虚無感に、瞳からは涙が零れ出た。

溢れる涙は止まるコトを知らず。シーツに物質的な波紋を広げてゆく。カーテンの隙間から僅かに洩れる月明りが、その雫を何処か幻想的なモノにしていた。

「ぅう……、ぅっ」

独り涙している裕太は気付かない。家のドアが開かれ、誰かが寝室へと向かっているコトに。瞳から、ぽとり。また一粒雫が落ちた瞬間。

淫靡な雰囲気が立ち籠めていた寝室が開け放たれた。

突如溢れた光に目を細める。

「ただいま、裕太」

刹那に聞こえた愛しい人の声に、先刻とは違う意味の雫を滲ませた。

薄ら闇のベッド上に裕太を認め、足早に歩み寄る。そして上着も脱がないまま、その華奢な体躯を抱き締めた。

「何、泣いてんの。そんなに淋しかった?」

「……淋しかった」

「ごめんな。独りにさせて」

目元を撫で、慈しむように小さなキスを沢山送った。裕太はくすぐったいように身を捩り、愛らしく微笑んだ。

その姿に鼓動が大きく躍動した所で。

「……ん?」

漸く室内の異変に気がついた。


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