黒い瞳、黒い髪の少年

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「犬夜叉?夕ご飯食べないの?」

半開きになったままのドアノブに手をかけ中へと入る。

「ねぇ、犬夜叉?・・・もう電気もつけないで・・・。」

日が沈み、真っ暗になったままの部屋をすっと見回した。

自分の部屋でも真っ暗のままでは聊か居心地が悪い。

ゆかりは手を伸ばし、明かりをつけようとした。

「余計なことすんなよ。」

いつものようにベッドの真ん中を陣取るように座っていた

犬夜叉は鉄砕牙を肩に担いだまま、瞳を伏せていた。

「いやよ。暗いの嫌い。」

「俺は明るいのが嫌なんだよ。」

「もう・・・。足元が危ないじゃない。」

締め切った窓からはまともに光りは入ってこない。

星は出ているのだろうが、街明かりが強いせいか、

ゆかりの世界で星明りはあまり役立たない。

そして、差し込んでもいいはずの月も今日はない。

ゆかりは手に持ってきた夕飯を乗せた御盆を

机の上におき、ふうっと溜息を洩らした。

今夜は朔の夜。

ゆかりに言われるまま、今日はこっちで過ごそうと

【現代】に来てみたものの、犬夜叉にとっては朔の夜である今夜は、

やはり普段より居心地が悪く、警戒心が強い。

「明るいところで朔を過ごしたことはない。」

「だから、こっちじゃ妖怪なんていないわよ。」

「つけるな。」

「もう。」

50年の封印が施される以前からの悲しい習性だろうか。

幼少の頃より、たった一人生きてきた犬夜叉。

魑魅魍魎が蠢く妖の世界で人間となってしまう朔の夜を

一体どんな気持で過ごしてきたことだろう。

どんな恐怖の中で膝を抱え、闇に潜んでいたことだろう。

そんな孤独を生き抜いてきた犬夜叉・・・。

じっと瞳を伏せ、闇の中で耳を澄まし、

神経を尖らせる彼を見ていると、

彼の過ごしてきた孤独と哀れみが胸のそこに込み上げてくる。

少しでも、この孤独が癒されるなら・・・

ゆかりはベッドの脇にあるスタンドのスイッチを入れ、

真っ暗な部屋に小さな明かりを灯した。

「これくらいなら、いいでしょ?」

「だから・・・。」

その言葉を阻むようにゆかりはベッドに腰掛ると、

犬夜叉を包み込むように、そっと背中へと頬を寄せた。

「今日はあたしがあんたを守るの・・・。」

「・・・・・ゆかり・・・。」

「今日くらい・・・、今夜くらい・・・、あたしが・・・。」


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