「え……ちょっと、なんであんただけなの?」
休日、学校の離れにある第2体育倉庫に入った途端私は不満げな声をあげました。私たちのクラスで普段使われていない第2体育倉庫を整頓することになったのですが、そこにいたのは富永という男一人でした。
「みんな、さぼったんだろ? いいじゃん、二人でやれば」
不機嫌な私と裏腹に富永は上機嫌で返事をしました。
それが、私をさらに不機嫌にしました。しかし、真面目な質なので、不服ながらも整頓を始めます。
時折、富永がなにやら話しかけてきますが、私は無視して、無言で片付けを続けます。
「なぁ、佐原。無視かよ?」
富永は不機嫌そうに言いますが、やはり無視。
体育倉庫はかなり埃っぽくて、体操服できて正解でした。
「なぁ、無視は酷いよな?」
そう言いながら、富永は私の後ろから抱きついてきました。
「……っ」
唐突なことでした。何もことばになりません。
「なんか、いえよ……ほら、声聞かせて?」
そういうと、富永は私の耳を舐めました。
「ひゃ……っ」
生暖かいぬるりとした感覚に悲鳴をあげます。
「やっと反応してくれた。俺、佐原の声好きなんだよ」
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